【Cross Care Academia:CCA】①介護現場の誤嚥性肺炎の現状について

CCA

介護現場の誤嚥性肺炎の現状について

CCA1回目では、介護現場の誤嚥性肺炎の現状についてお届けしたいと思います。

介護に携わっていると、誤嚥性肺炎という言葉をよく耳にするかと思います。
介護現場では誤嚥性肺炎が非常に多く、まさに蔓延している、といった状態です。

それでは、介護現場の肺炎はどれくらい多いのでしょうか?

そこで、こちらのデータをご覧ください。

①介護現場では肺炎による入院が非常に多い


福岡市内の特別養護老人ホーム(特養)5施設の入院状況を示すグラフになります。

5施設のデータを統合し、入居定員を100名に調整したところ、
年間合計で約1,600日の入院がありました。

その中でも肺炎による入院が最も多く、
入院日数の約1/3を占めており、約500日の入院がありました。

人数で見てみても入居定員の約1/5にあたる方が肺炎にかかっていました。

このように介護現場では、肺炎による入院が飛びぬけて多いことがわかります。
更には、複数の方が肺炎による入院を繰り返している現状もありました。

また、グラフ中に肺炎と誤嚥性肺炎の表記が混在していますが、その違いは何でしょう?

②介護現場の肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎です

肺炎といっても新型コロナ肺炎、間質性肺炎など、様々な種類の肺炎があります。
誤嚥性肺炎も、肺炎の中の一つになります。

肺炎における誤嚥性肺炎の割合は年齢とともに増加していきます。
介護現場に多い80、90歳代ともなると、その約9割は誤嚥性肺炎です。
すなわち、介護現場の肺炎は、ほとんどが誤嚥性肺炎であるともいえます。
そのため本分では、肺炎と誤嚥性肺炎は、ほぼ同義として扱って頂ければ幸いです。

さて、肺炎の現状に戻りますが、先ほどのグラフで介護現場の誤嚥性肺炎が多いことを知っていただきました。

肺炎が多いのは、他の施設ではどうなっているのでしょうか?

③介護現場で肺炎の入院が多いのはどこでも共通

こちらは、別の時期の、別の法人を対象とした、福岡市内の特養9施設のデータになります。

やはり、先ほどと同様に肺炎による入院が飛びぬけて多いことがわかります。

入院日数の約1/3を、入居定員の約1/5を肺炎が占めていることがわかります。

肺炎による入院を繰り返している方が多いのも同様です。

このように介護現場の肺炎が多いのは、どこでも共通事項であり、介護現場に誤嚥性肺炎が蔓延していることがお分かりいただけたかと思います。
これらの施設以外にも、これまでのデータの蓄積では、やはり全国的にどこの施設でも誤嚥性肺炎が多いのは共通です。

それでは、誤嚥性肺炎にかかったその後はどうなってしまうのでしょうか?
多くの方が誤嚥性肺炎に苦しまされる状況があります。

肺炎にかかった方のその後を見てみましょう。

④肺炎になると多くの方が退去・死亡につながる


肺炎にかかった後、無事に退院し施設に戻ってこれたのは、
たった約4割でした。

半数以上の約6割の方は退去や死亡につながっていました。

肺炎で亡くなる方、入院が長期となり退去を余儀なくされる方、また医療的ケアが必要となり施設に戻れない方など、一度肺炎にかかってしまうと、その予後はすぐれないことがわかります。

肺炎が死に密接した非常に怖い病気であることがわかります。

また、肺炎は非常に苦しい病気でもあります。
肺に炎症が起こるということは、呼吸が苦しくなります。
高熱が続き、喉には痰(タン)が溜まり呼吸の苦しさが持続します。
食事をすると、その刺激を引き金に、喉には更に痰(タン)が溜まり、呼吸の苦しさとなるため食事を受け付けない。
すなわちみるみる痩せていきます。
悪寒、寒気、胸の痛みなど、様々な辛い症状に苦しまされるのが肺炎です。

苦しいのは肺炎にかかったその方だけではありません。
その苦しみは、家族にも訪れます。
愛する方が目の前で苦しむ姿をみて、その姿に胸がギュッと締め付けられるように、心を痛める家族の方も多いはずです。

また介護者さんも多くの時間を共有しています。
生活をともにする方が、肺炎によって入院し、その先で死亡した事実を聞き、心を痛めることも多いはずです。
また、退院してきたものの別人のように痩せ、介護度は上がり、大きく変わったその姿に胸を痛めることもあるかと思います。

このように肺炎はかかったその方だけでなく、その周囲を取り巻く多くの方の苦しみにつながります。

また、肺炎によって苦しい思いをするのは、家族・その周囲の方だけではありません。

⑤肺炎は施設の収入低下・大量の医療費につながる


例えば、介護現場の肺炎は介護事業所の収入の低下につながります。
先ほどのデータをもとに試算すると100名の特養であれば、肺炎によって年間950万円の施設収入の低下です。
これは介護職員の収入低下と無関係とは言い切れません。

また、事業所として十分な人員配置ができないことや、介護機器・器材の購入の抑制にもつながります。
これは、介護の質の低下につながり、最終的には利用者さんの不利益となります。

介護事業所以外にも、医療費の問題も生じます。
肺炎入院に伴って発生する入院医療費は、試算すると100名の特養であれば、年間3,400万円にものぼります。

これは、私達が支払っている税金からも賄われており、私にとっても無関係な話ではありません。

このように、介護現場でおきる誤嚥性肺炎は、皆の不利益につながっています。
もし、誤嚥性肺炎を減らすことができるのならば、皆さまの幸せにつながることにもなります。

そこで、誤嚥性肺炎を減らすためには口腔ケアが重要となってきます。
誤嚥性肺炎ゼロプロジェクト(ゼロプロ)では、
介護者さんが無理なく簡単に適切に行える、継続しやすい週2回の、介護のための口腔ケアの普及・実践活動を行っています。

次回は、ゼロプロが提案する介護者が行う週2回の介護のための口腔ケアについて説明したいと思います。

CCA2回目に続く↓

【Cross Care Academia:CCA】③介護の力で誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例

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記事の著者

瀧内 博也(HIROYA TAKIUCHI)
代表取締役(Co-Founder / CEO)
歯科医師・博士(歯学)
©株式会社クロスケアデンタル

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その想いから、徹底的に介護の現場に 寄り添える方法を追求しています。
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