【Cross Care Academia:CCA】③介護の力で誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例

CCA

介護の力で誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例

CCA2回目では、介護者が行う週2回の介護のための口腔ケアについてお届けしました。
3回目では、いよいよ口腔ケアの実践編です。
まずは、介護の力で誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例ついてお届けしたいと思います。

CCA初回『はじめに』で登場した、特別養護老人ホーム(特養)マナハウスの取り組みになります。
特養マナハウスは福岡市内にある特養で、入居定員が69名、当時の入居者の平均年齢は85.1歳、平均要介護度は4.0の施設です。

特養マナハウスの口腔ケア開始前の入院日数のデータがこちらになります。

① 口腔ケア開始前の肺炎の入院の現状


年間で合計1248日の入院がありました。
その中でも、肺炎による入院が最も多く、
446日で全体の約1/3を占めていました。
人数で見てみても、入居定員の約1/4の16名が入院していました。
更には、繰り返しの入院が多く、16名で延べ合計19回の入院がありました。

衝撃的であったのは、肺炎による入院のその後です。
肺炎によってそのまま死亡される方、入院が長期になることや、医療的ケアが必要となることで退去を余儀なくされる方など、
16名の内13名が施設に戻ってこれませんでした。

このように、介護現場の肺炎は命を脅かす脅威であり、猛威を奮っていました。
そこで、このような状況を打破するために、介護職員が利用者さん全員に対して週2回の口腔ケアに挑戦しました。

その効果は劇的でした。
こちらのグラフをご覧ください。

② 介護職員が週2回の口腔ケアを実施


月ごとの入院日数の推移を表したグラフになります。
口腔ケア開始直後から、肺炎による入院日数を示す赤いグラフの山が低くなっています。

それまでは毎月、肺炎による入院が途切れることなく続く中で、
介護職員が週2回の口腔ケアを開始した直後から、肺炎による入院日数はすぐにゼロに減少しました。
その後も、多少の肺炎はあったものの、少ない入院日数を維持することができました。

より詳しく見てみましょう。

③ 口腔ケアに取り組んだことで誤嚥性肺炎は激減

口腔ケア開始前の1年間の肺炎による入院日数が545日であったのに対し、
開始後1年間の入院日数は144日です。
何と、入院日数は約1/4に減少しました。

これにより、口腔ケアが週2回であろうとも、介護従事者が行うことで、口腔ケアで誤嚥性肺炎が予防できることが明らかになりました。

また、口腔ケアは肺炎を減らすだけでなく、更にすごい結果を生みました。
再度②のグラフを見てみましょう。

口腔ケア開始直後から、青いグラフの山も低くなっています。
これは全ての入院日数が減少したことを示します。

こちらも、より詳しく見てみましょう。

④  肺炎だけでなく全体の入院日数も激減


口腔ケア開始前の1年間の全体の入院日数が1310日であったのに対し、
開始後1年間の入院日数は459日です。
何と、全体の入院日数も約1/3に減少しました。
施設の稼働率も93.9%から97.5%と、3.6%もの改善です。

おそらくこれは、口腔ケアが低栄養の予防、免疫力の改善につながり、このような結果を生んだのでしょう。
全ての入院が減少するということは、これはすなわち命を守った、ということです。
これにより、週2回の口腔ケアによって、介護の力で命を守れる可能性が示されました。

口腔ケアが生んだ結果は更にあります。

⑤  介護の力で肺炎は減り、全体の入院も減少


入居者の入院は、介護事業所の収入低下につながります。
そのため、口腔ケアによって入院日数が減少すれば、
介護事業所の収入増加とも捉えることができます。
試算すると入院日数の低下により、介護施設の収入は年間約1,200万円も増加したこととなります。

入院することによって入院医療費も発生します。
口腔ケアで入院日数が減少したことによる入院医療費の削減額は、試算すると年間で約4,250万円にもなります。

このように、口腔ケアは利用者さんの命を守り、介護施設の収入増加につながり、更には医療費の大幅な削減といった、誰にとっても有益である、まさに三方良しの効果を生むことがわかります。

肺炎が多いのはこの事業所に限ったことではなく、おそらく全国の介護現場で共通のことでしょう。
そのためゼロプロでは、口腔ケアの実践だけでなく、その普及も大きな目標に掲げています。
もし口腔ケアでどの介護現場でも、スムーズに口腔ケアに取り組むことができれば、
そして同様に介護の力で命が守れるという結果が得られるのならば、
口腔ケアでより多くの命を守れることになります。
そこで、ゼロプロでは、口腔ケアを科学的介護として確立すべく、これらの再現性を確かなものにすべく、全国の介護現場で口腔ケアに取り組んでいます。

そこで、CCA4回目では、再現性の獲得のためにも、介護と医療で連携して口腔ケアに取り組んだ事例についてご紹介したいと考えています。

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記事の著者

瀧内 博也(HIROYA TAKIUCHI)
代表取締役(Co-Founder / CEO)
歯科医師・博士(歯学)
©株式会社クロスケアデンタル

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その想いから、徹底的に介護の現場に 寄り添える方法を追求しています。
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