【Cross Care Academia:CCA】④介護と医療で連携して誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例

CCA

介護と医療で連携して誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例

CCA3回目では、介護の力で誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例についてお届けしました。
誤嚥性肺炎ゼロプロジェクト(ゼロプロ)では、
口腔ケアで誤嚥性肺炎や全ての入院が減らした結果の再現性が、
その他の事業所でも得られるのか、を目標に多く介護現場で口腔ケアに取り組んでいます。

そこでCCA4回目では、介護と医療で連携して誤嚥性肺炎を減らした取り組み事例ついてお届けしたいと思います。

特別養護老人ホーム(特養)サンガーデンの取り組みになります。
特養サンガーデンは福岡市内にある特養で、入居定員が29名、当時の入居者の平均年齢は82.7歳、平均要介護度は4.0の施設です。

特養サンガーデンの口腔ケア開始前の入院日数のデータがこちらになります。

① 口腔ケア開始前の肺炎の入院の現状


年間で合計654日の入院がありました。
その中でも、やはり肺炎による入院が多くを占めており、
全体の約1/4である179日でした。
人数で見てみても、入居定員の約1/3の8名が入院していました。
そして、繰り返しの入院があり、8名で延べ合計9回の入院がありました。
CCA3回目でお届けした特養マナハウスでは、介護職員による週2回の口腔ケアを行いました。

特養サンガーデンでは、
介護と医療が連携して、医療従事者が週1回、加えて介護職員が週2回を目標として、入居者さん全員に対して口腔ケアに挑戦しました。

その効果は劇的でした。
こちらのグラフをご覧ください。

② 介護職員が週2回の口腔ケアを実施


月ごとの入院日数の推移を表したグラフになります。
こちらの施設でも毎月、肺炎による入院が途切れることなく続く中で、
口腔ケアの開始直後から、肺炎による入院はいきなりゼロになりました。
その後も、しばらく肺炎ゼロをキープし、
その後も多少の肺炎はあったものの、かなり少ない状態をキープできました。

そして、口腔ケアの開始直後から、赤い山だけでなく、やはり青い山も低くなっています。
肺炎だけでなく、全体の入院日数も減少していることがわかります。

より詳しく見てみましょう。

③ 肺炎だけでなく全体の入院日数も激減


口腔ケア開始前の1年間の肺炎による入院日数が232日であったのに対し、開始後1年間の入院日数は29日です。
何と、入院日数は約1/8に減少しました。

また、口腔ケア開始前の1年間の全体の入院日数が1310日であったのに対し、
開始後1年間の入院日数は459日です。
何と、全体の入院日数も約1/2弱に減少しました。

施設の稼働率も89.3%から95.2%と、なんと5.6%もの改善です。

この結果により、口腔ケアによって誤嚥性肺炎が減ることは、より強い事実となりました。
また、標準化された口腔ケアの再現性が証明され、口腔ケアによって肺炎だけでなく、全ての入院を減らせる、
すなわち口腔ケアで命を守れる可能性はより強いものになりました。
口腔ケアの科学的介護としての確立に一歩近づいたといえます。

また、肺炎による入院1回あたりの平均入院期間は34.0日から22.5日に減少しました。
ちなみに、CCA3回目の特養マナハウスでも、21.8日から11.1日に減少しています。
口腔ケアが低栄養の予防、免疫力の改善につながり、更にその後の重症化リスクの低下につながったのではないでしょうか。
これは口腔ケアが、肺炎だけでなく全ての病気に対しても有益であることを裏付けていると思います。

周囲への影響も見てみましょう。

④ 介護・医療の力で肺炎は減り、全体の入院も減少


口腔ケアによって入院日数が減少したことで、
介護施設の収入は年間約660万円も増加しました。
医療費の削減額は、約2,350万円にもなります。
やはり、口腔ケアによる効果は正に三方良しです。

全国に目を向けてみると、特養だけで約1万事業所あります。
もし、全国の特養で口腔ケアに取り組み、同様の結果が得られたとしたら、その年間の医療費削減効果の概算は約4.600億円です。
もしも介護現場全てにこの口腔ケアが行きわたれば、何兆円といった医療費を介護の力で削減できるのかもしれません。

口腔ケアは、介護職員にとっても大きな変化を生んでくれました。
自分自身で行う口腔ケアによって、日々お口の中は変化していきます。
ツバがしっかりでやすくなり、口臭が減っていきます。
舌が動くようになり、お口の周囲の筋肉も柔らかくなっていきます。
しっかりと食事ができるようになり、明らかに入院が減っていきます。

自分の目でその変化を見て、それに伴う数字の変化を見て介護職員の意識は大きく変わっていきました。
自分の手で命を守っていることを実感し、介護に自信を持つ方が増えました。
今では多くの方が、活き活きと口腔ケアに取り組んでいます。

この事実は事業所を大きく変えました。
CCA3回目で取り上げた特養マナハウスの離職率の変化を見てみましょう。

⑤ 口腔ケアの取り組みは離職率にも影響を与える?


口腔ケアに取り組む以前は、多くの方が毎年離職していました。
しかし、口腔ケアに取り組み始めた頃から、
離職者数は劇的に減りました。

更に最近では、
口腔ケアという特色を持った事業所に就職を希望する方が増えました。

職員が辞めない、就職希望が増えることで、安定した人材を確保し、より質の高い介護を利用者さんに提供できるようになりました。

このように、口腔ケアは介護に関わる方の意識を変え、事業所全体をよりよいものに生まれ変わらす可能性を秘めたものです。
口腔ケアで介護職員がキラキラと輝き、利用者さんが元気になっていただける事業所が増えることは素晴らしいですね。

ゼロプロでは、口腔ケアの可能性について向き合っていきたいと思います。
口腔ケアが誤嚥性肺炎を減らせること、そして命を守れること。
どこでも口腔ケアによっての結果の再現性が得られること。
口腔ケアが介護現場を大きく変えてくれること。
一つ一つと全力で向き合い、口腔ケアを科学的介護として確立させるためにも、これからも取り組んでいきます。

CCA①~④回目を通して、ゼロプロの概要についてご説明させていただきました。
誤嚥性肺炎の現状や、口腔ケアの可能性について、ここまで読んで頂きありがとうございました。

口腔ケアに興味を持たれた方、自分たちで取り組んでみたい方、
また歯科医療従事者の方で口腔ケアを学びたい方、口腔ケアを広めたい方、
ゼロプロはどんな方でも歓迎いたしますので、是非ご連絡お待ちしております。

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TEL: 092-986-9600

記事の著者

瀧内 博也(HIROYA TAKIUCHI)
代表取締役(Co-Founder / CEO)
歯科医師・博士(歯学)
©株式会社クロスケアデンタル

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その想いから、徹底的に介護の現場に 寄り添える方法を追求しています。
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